5分でわかる自動運転バス

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車が自動運転になるとみんなの生活は変わるの?

みんなの生活が大きく変わることは間違いないんだけど、「どう変わるか?」を予測・整理するのは意外と難しいね。
自動運転車で生活が大きく変わるのは、「人が運転をする必要がないから」っていうのが大きいと考えているよ。

うん、運転する必要がないから、免許を持っていない子供や、運転が難しいお年寄り、あとお酒を飲んでても自分で車に乗って移動できるんだよね(笑)

そうそう!自動運転化することで車が便利になると、皆が今よりも車に乗ることになる。
あと、実は事故が減ることも期待されているよ。

人が運転する車だと、見落としや判断ミスによる事故があるけれど、自動運転の車では機械が判断するから減ると言われているんだ。
自動運転を開発する多くのメーカーは、より安全で安心できる車を目指して開発を進めているよ。

事故も減るんだ。僕の家の車も早く自動運転になると良いなあ。

そうなれば嬉しいんだけど、まず一番最初にバスなどの決まったところを走る公共交通が自動運転化すると言われているよ。
いろいろな理由はあるけれど、決まった場所を走るバスの方が導入しやすいんだ。

そうなんだ。いつになったらみんなの車は自動運転になるんだろう。

うーん、いつになるかは何とも言えないけど、「自家用車のほとんどが自動運転車」となるのはかなり先だと思うよ。
今自動運転車を作るのはすごく費用がかかるんだ。だから、たくさん作って一台あたりの費用を下げることが大事だね。

あと安全管理もすごく重要。自動運転をするためには、たくさんのセンサーや高機能なコンピューターを使うんだけど、それぞれきっちりと管理しないと駄目なんだ。家にあるパソコンも同じだけど、外部から侵入されて乗っ取られるようなことがあると安心して乗れないよね。

確かに、先生の言うとおり、安全管理ができる交通機関の方が先に自動運転に変わりそう。

高齢化が進む中、「自分の家の近くにもバスやタクシーを走らせて欲しい」という声が各地であるのも見逃せないね。
タクシー会社やバス会社は運転手さんのお給料が費用の大部分を占めているから、あまり人が乗らない場所でサービスを提供するのは難しい。ただ自動運転化が進んで、無人で車を走らせられるようになれば、そういった場所でもサービスを提供できるようになるんだ。

おばあちゃんの家はとても田舎にあるんだけど、バスもタクシーもほとんど走ってないよ。自動運転化したら、バスに乗っておばあちゃんの家まで行けるかな。

そうなる可能性が高いよ。とっても便利になるね。
あと、自動運手化が進むことで新しいサービスも期待されているんだ。

カーシェアリングやライドシェアリングといった言葉を聞いたことはないかな?今は法律でルールが決まっているけど、自動運転になると一人ひとりが車を持たずにみんなで共有するような新しいサービスも期待されているんだよ。もっと安く、自由にみんなが移動できる未来も近くまで来ているかもしれないね。

だいぶわかってきたよ。

自動運転化が進むと色んなサービスが便利になるし、新しいサービスも生まれるから、みんなで自動車を持つよりも使った方がいい。だから自動運転化が進むと、車の所有率は下がるんじゃない?

とっても良い視点だね。そのように予想している人が多いよ。

自家用車では車が動いている時間は5%と言われていて、残りの95%は駐車場で停車しているんだよ。個人で所有する車が減ると、常に走っている車が増えるから車の停車時間も短くなって、必要な駐車スペースも少なくなるよね。駐車場が減ると、その土地を公園にしたりいろいろな使い方ができるので、街も大きく変わるだろうね。

本当に色んなメリットがあるんだね。

多くの人がいろいろな未来を想像して、便利なサービスや使い方を考えている。ここでは話さなかったけど、みんながよく使う宅配便の配達に利用しようと考える人、お店をそのまま運べばいいと考えている人、寝ながら移動するようなお家みたいな車を考えている人もいるんだ。

みんながこれから変わる未来を楽しみにしているんだろうね。

自動運転は本当に安全なの?

やっぱり運転する人がいない自動運転車に乗るのは少し不安…本当に安全なの?

そうだね、そこは心配だよね。自動運転でも100%安全とは言えないんだよ。

たとえば、急に地面に穴が開いたりすれば、自動運転でも人が運転してても避けられないよね。自動運転では、AIと呼ばれる人工知能が運転をするんだけど、さまざまな状況を学習して、賢く運転できるようになるんだ。だから多くの経験を積めば積むほど安全になると言われている。

あと人間と違うのは、一台でだけじゃなくて、多くの車で学習したことを共有するので、その学習スピードは圧倒的に速いんだ。
しっかりと学習したAIで自動運転が実現すれば、人が運転するよりも安全な乗り物になるのは確実だよ。

そうなんだ。でも100%は無理なんだね。だとするとやっぱりAIに運転を任せるのはちょっと怖いかも…

ただ人が運転する自動車による交通事故は近年減少傾向にあるとはいえ、日本だけでも年間50万件近くあって、そのうち死者は年間4,000人近くにも上るんだ。毎年同じような事故件数でみんなそれに慣れてしまっているけれど、人が運転する車が起こす事故はすごく多いんだよ。


事故件数及び事故による死亡者数の推移

テレビでやっていたけど、車より飛行機の方がかなり安全なんでしょ?

自動車はこれだけ事故を起こす確率が高いけれど、自動車を運転することが危険という意識もあまりないかも。

安全であっても安心できるかどうかは別の問題だね。飛行機は安全だと思っているけれど、一度事故が起こると大変なことになるから、どうしても心配になるよね。だからこそみんなが安心して自動運転の車に乗るためには、正しく理解することと、安心できる仕組みをしっかりと作ることが大事になるね。

安心できないっていうのは、やっぱり運転手がいないことじゃないかな。万が一事故があったときに、運転手のミスによって起こるのと、ソフトのミスによって起こるのでは全然感じ方が違う。やっぱり人に任せてる方が安心かもしれないなあ。

そうだね。もちろんAIだけで全ての問題を解決できるわけじゃない。やはりしばらくの間はバス会社の人がちゃんと遠隔から車両の状況や車内の状況を監視できる仕組みが必要なんだ。

今回の実験ではSBドライブが開発した遠隔監視システム「dispatcher」を使って、実際に日立電鉄の南営業所でしっかりとプロの目で監視しているよ。あと、客観的に安全性を評価する仕組みも必要だね。今よりどこまで事故率が下がれば無人運転車が道路を走れるのか、何時間連続で問題なく動けばいいのか。一つずつ決めていきながら、実現することが大事だと考えているよ。

いきなり「無人」運転になるの?

いろいろ自動運転について調べてみたんだけど、「無人」運転にはいつからなるんだろう?

結論から言うと、自動運転になっても「無人」運転になるにはまだしばらく先だろうね。
特にバスだと運転する以外にも、運賃を集めたり、ベビーカーの乗車を手伝ったり、やることがいっぱいあるんだ。だから無人化するにはまだ時間がかかると言われているよ。
調べた中に「レベル2」とか「レベル4」とか言う言葉は出てこなかった?実は自動運転にもレベルがあるんだ。

レベル?そう言えば書いてあったような気がする・・・

自動運転のレベルは以下のように定義されているよ。 
レベル1:システムが右左折、加減速の「どちらかを」サポート
レベル2:システムが右左折、加減速の「どちらも」サポート
レベル3:特定の場所でシステムが全てを操作、緊急時は運転手が操作
レベル4:特定の場所でシステムが全てを操作
レベル5:場所の限定なくシステムが全てを操作

厳密にいうとレベル3からが「自動運転」で、レベル1~2は「運転支援」という領域かもしれないね。

レベル4とレベル5は「無人」運転ということだね。ただ導入はかなり先になるんだね。

自動車メーカーが既に商品として出しているレベル1~2程度の自動車であれば、運転の安全性を高めるために導入されていて、自動運転化はすでに進んでいるよ。
ただ、レベル3などの中途半端な自動運転だと、逆に危ないかもしれないと考えている人もいるんだ。

ん?どうして?レベル3ならほとんど自動車が勝手に運転してくれるんだよね?

それが逆に危ないんだ。人間とソフトウェアの掛け合わせで精度が上がる分野は多いんだけど、運転においてはそうもいかない。

実際にGoogleが過去にレベル3の自動運転車に従業員を乗せる実験をしたところ、ある程度自動運転での移動に慣れた段階から、一部の従業員は探し物をしたり、後ろを向いたり、全然集中力がなくなってしまうという結果が出たんだ。今年UBERの自動運転車で死亡事故が起きたんだけど、それもその典型例だね。

なるほど。じゃあ段階的に自動運転のレベルを上げていくというより、もう一気にレベル4以上の自動運転車を作ることを目指したほうが良さそうだね。

そういう風に考えて、最初からハンドルがない車を作ろうとしている人たちもいるんだよ。たとえばGoogleが2014年に発表した車や、フランスのNavyaやEasy Mileが作る車にもハンドルはついていないんだ。

より安全な自動車を作っていくために、さまざまなアプローチを取る会社があるので、いつから誰が販売するのか、まだまだわからないね。


NAVYAの自動運転車輌

自動運転車は誰が作ってるの?

自動運転車輌の製造ってとても難しそう・・・どんな会社が作ってるの?

そうだね、最終的な自動車を販売する立場のOEMと呼ばれるメーカーでは、日本のトヨタ、日産やホンダなどがいるし、海外ではGMやFord、VW、BMWなどがあるね。それ以外にも中国や韓国の会社も研究・開発を進めているし、最近参入したTeslaというメーカーも積極的に開発しているよ。

あと、これまで車を作ってこなかったGoogleやApple、ソフトバンクやUBERも自動運転の技術開発をしているよ。今回の日立市で走る車は、東京大学にルーツを持つ先進モビリティという会社が作っているんだよ。

なぜそんなに多くの会社が自動運転開発を進めているの?

今の車も多くの会社が分担して作っているけれど、新しくセンサーや高性能なGPUと呼ばれるパソコン、さらには通信技術を持った会社など、これまでとは違う部品や機能が必要になっていて、それらを得意とする会社が参入して来ているんだ。

自動車を安価に大量に作るには高い技術が必要で、これまで参入することは容易ではなかったんだけど、自動運転に変わろうとする今は、新しく参入を目指す企業にとって大きなチャンスになっているよ。

なるほど。これまでの自動車と違って、GoogleとかソフトバンクのようなIT企業も参戦してるのが面白いね。

そうだね、これまでの自動車メーカーも将来の変化に備えていろいろな取り組みを進めているよ。一見すると「既存企業 vs 新規企業」、つまり「自動車大手企業 vs IT企業」という構図に見えるので、新聞やニュースでもたくさん報道されているね。ただ最近では、Googleがジャガー・ランドローバーと提携する発表をしたり、トヨタがUBERに出資するなど、単純に競争しているわけでもないんだよ。それだけ開発は難しいということだね。

そうなんだ。協力して開発していかないといけないんだね。

それぞれ会社として持っている強みが違うからね。自動車大手企業はハードウェアや制御、IT企業はソフトウェア、AI周りに強みを持っているよ。
あとで(自動運転の技術:Q3)説明するけど、自動運転においてはAIや画像認識が非常に重要だから、これまで車を作ったことのないIT企業が積極的に参戦しているんだ。 ただ、IT業界と自動車業界では、「失敗したときの影響」が大きく違うよね。

どういうこと?

例えば障害でWEBページが表示されなくなったとき、エンジニアの方々が対応すれば元通りになるよね。もちろんそれによって人が死ぬこともない。だからこれらのIT企業は「早く作って軌道修正」という文化なんだ。
一方、自動車のハンドルが不備を起こして機能しなくなったらどうなる?大きな事故に繋がって、最悪人の死につながりかねない。IT企業がこれまで行ってきたビジネスとは文化が真逆なんだよ。

なるほど。色々話を聞いていると、Googleのような会社の方が開発が進んでいそうだけど、そう簡単な話でもなさそうだね…

自動運転「バス」はいつから乗れるの?

先生はさっき(基礎講座・Q1)、まずは交通機関から自動化が進むと言っていたね。自動運転バスはいつから乗れるの?

2020年の前半くらいには、みんながお金を払って乗る自動運転バスが走っているんじゃないかな。日本でも国を挙げて、準備を進めているんだよ。
2020年には東京でオリンピックがあるし、そこで技術を披露する計画も立てられているみたいだよ。

意外に近い将来なんだね。じゃあすぐに乗れるようになるのかな。

いきなりすべての道路で走ることは難しいんだよ。たとえば車が非常に多く走る道路や、ものすごく狭い場所では自動運転バスを走らせるには、まだまだ経験が足りないんだよ。

だから最初は、
・レベル4,5ではなくてレベル3
・全ての路線ではなく、道路条件の良い路線だけ
そういう意味では、日立市のBRTは条件に合った場所と言えるんだよ。

なるほどね。「道路条件が良い」ってどういうこと?

現在開発されている自動運転バスが走りやすい道路の特徴は、
・車線が単一
・交差点が少ない
・歩行者・自動車の通りが少ない
・トンネルや踏切がない
などがあるよ。要するに、複雑な道路だと難しい判断が必要になるし、自分の位置を知るGPSとかセンサーが効きづらい場所はまだまだ苦手だと言えるね。

その条件を満たす路線はなかなか少なそうだね・・・

そうだね。だからこそ最初に自動運転バスに置き換わるのは、日立のような「BRT」と「ラストワンマイル」と呼ばれている場所が有望だろうね。

BRTって色んなところにあるんだ?そもそもBRTってなんだっけ。

BRTは、Bus Rapid Transit(BRT、バス・ラピッド・トランジット)と言って、「バス専用道路」を走るバスだよ。世界中のいろいろな場所で展開されていて、日本でも何箇所かで走っているよ。2020年のオリンピックの時には、選手村がある晴海から虎ノ門を走るそうだよ。
BRTの道路には基本的に人やバス以外の車輌は入ってこない専用道路なんだ。簡単に言うと、電車とバスの中間みたいな存在だね。


日立市のBRT

なるほど、イメージが湧いたよ。あとさ、さっき先生がいったもう一つの「ラストワンマイル」って何なの?聞いたことないなあ…

ラストワンマイルというのは、家からバス停のような部分の移動手段だよ。たとえば、バス停から先の自転車や駅からちょっとだけ乗るタクシーみたいなものかな。

自動運転の車には、以前紹介したハンドルがないような車があったよね?あの車はスピードは出ないけど、小さい車体で小回りが利くから家の前まで行けるんだよ。その車で家から乗って、最寄のバス停や駅まで移動したり、近くの商店街に買い物に行ったり、日常生活のちょっとしたお出かけの領域をラストワンマイルと呼んでいるよ。

なるほど、ラストワンマイルのバスはおばあちゃんが病院に行くときにも便利そうだね。いろいろな人が利用しそう。

「走る場所が決まっていること」も自動運転化する上で大事なことなんだ。バスも同じだけど、いろいろな場所を走る必要があると、AIが学習するための時間が莫大に必要だから、なかなか実現できないんだよ。みんなもそうだと思うけど、生活している場所のことはよく知っているよね。自動運転車両にとっても、良く知った道を走る方が安全なんだよ。

自動運転バスのサービスの特徴は?

自動運転のバスに乗るのが楽しみになってきたよ。自動運転バスって、無人運転になること以外は今のバスと一緒なの?

バスには車掌さんが新しく乗車することになるだろうね。その人が案内をしたり、手助けの必要な人のサポートをしたり、新しい役割をすると思う。あとそれに付け加えて、車内の様子はカメラを通じて遠隔から常に確認することになると思うよ。

あとお金の支払い方も、現金で払うよりもICカードとか電子マネーと呼ばれる方法にも対応するようになるかな。いろいろな方法で支払えると、海外から来た人も支払いやすくなるし、小銭を用意する手間も省けるね。

バスの車輌自体は今と同じ形なの?

バスの大きさも変わるかもしれないね。運転手さんが必要だと、大きな乗り物の方が効率的だったけど、自動運転バスの値段が下がると、もう少し小さい乗り物になる可能性もあるね。バスが小さくなると、いろいろな行き先ごとに細かく走らせることができたり、乗る人が急に増えたときにも柔軟に対応できたり、メリットがたくさんあるよね。
実際、現在開発されている自動運転バスも10人ちょっとが乗るものとか、20人ちょっとの小型バスのものが多いんだよ。

乗り物の形も大きく変わるかも知れないんだね。そうなると「あ、自動運転のバスだ」ってパッと見でわかるようになるかもね。

乗り物の形もそうだけど、バスに乗る時の体験も大きく変わっていくと考えているよ。
自動運転バスになると、近づいていくるバスが本当に止まるのかどうか不安に思うんじゃないかな。あとは同じようなバスがたくさんあるとどれに乗ればいいのかもわかりづらいよね。

確かに、バスに乗るのが難しくなりそう…それは困るね。

だから、多くの人が持っているスマートフォンを使って行きたい場所を検索すると、こまかく案内してくれたり、ついでにチケットが買える機能、さらに乗るべきバスを教えてくれたり、乗り過ごさないように教えてくれる機能とか、いろいろな便利な機能が提供されるようになると考えているよ。

バスの運転手さんはどうなるの?

無人運転になると、バスの運転手さんはどうなるの?

そうだね、毎日会う運転手さんがどうなるのか気になるよね。

自動運転と無人運転の違いはさっきも話したけど、自動運転になっても運転手さんがやっていた仕事はゼロにはならないんだよ。
お客さんの案内や車内の安全確保とか、やることはいっぱいあるんだ。

じゃあしばらくは運転手さんはバス車内にいるんだね。

その通りだよ。
運転手さんの運転はAIが変わりにやるけれど、遠隔からは正しく走っているのか、トラブルはないのか確認することはなくならいないよ。

将来的にはただ一人が一台を見るんじゃなくて、複数のバスを遠隔から監視して、管理していくことになると思う。ただそれもまだかなり先の話かもしれないね。

自動運転車はどんな技術で動いてるの?

自動運転車はどんな技術で動いてるの?

「自動運転車は誰が作ってるの?」でも少し話したけど、自動運転車はソフトウェアの塊でものすごく複雑だから、全部を説明すると1日で終わらないけど...(笑)

僕にもわかるように、簡単に説明してくれたら嬉しいな…

自動運転車に関わる技術の要素を大きく分けると、
① 認識する:運転手の「目」の代わり。歩行者や自動車、建築物を認識する。
② 考える・判断する:運転手の「脳」の代わり。①で認識したものを踏まえ、停車や回避、右左折の判断をしたり、最適なルートを考えたりする。
③ 動かす:運転手の「手足」の代わり。②で判断したことを踏まえ、実際に車を動かす。

なるほど。じゃあ「認識する」、「考える・判断する」、「動かす」それぞれで必要な技術って何なの?

① 認識する:高精度カメラ・LIDAR・GPS・3Dマップなど
② 考える・判断する:AI・GPUなど
③ 動かす:電子制御など
それぞれ、詳しくは次のところで説明するよ。


どうやって歩行者や自動車を「認識」するの?

歩行者や自動車を「認識」するための技術について教えてほしいな。

本当に技術を全部挙げるとキリがないんだけど、ここでは「高精度カメラ」、「LIDAR」、「3Dマップ」について説明するよ。
まず「高精度カメラ」と「LIDAR」についてなんだけど、単語自体は聞いたことない?

「高精度カメラ」は画質の良いカメラかな? 「LIDAR」は聞いたこともないよ。

高精度カメラと言ってもただ画質が良いだけでなくて、「撮影したものが何か?」、「どの方向に動いているか?」も画像の処理を通じて明確にしてくれるんだ。
ただ、高精度カメラはどの方角に「どのような物体があるか?」を認識するのが得意なんだけど、一方で「物体との距離を測る」ことは苦手なんだよ。最近は「ステレオカメラ」で二つの映像から物体との距離を測る技術も盛んだけど、瞬時に距離を測るのはやはり難しいんだ。

確かにカメラで撮られた写真を見ても、映っているものとの距離はわからないもんね。

一方「LIDAR」はパルス状の赤外線を照射(1秒間に数百万回照射)して、周りの物体に反射して返ってくるまでの時間を測定することで、物体との距離を測るんだ。

今開発されている自動運転車のほどんどはカメラとLIDARを双方搭載して、お互いの弱点を補おうとしているよ。
LIDARの弱点は、この画像のようなモデルを作る処理速度が遅いことだね。ゆっくり走行する自動運転車なら良いけど、速いスピード走っている中で緊急事態に対応するのは難しい。
あと、色んな企業が開発に乗り出していて価格は徐々に下がっているけど、とにかくLIDARは高価なんだ。


LIDAR(パイオニア株式会社製)

LIDARの投射によりできる点群画像

なるほど。目で見ていたものを機械に置き換えようとすると、難しい問題がたくさんあるんだね。

カメラとLIDARは車の近くの情報を認識する技術だけど、あと自動運転車は「3Dマップ」を活用して、「今どこに走っているのか?これからどの道を走っていくべきなのか?」を判断するんだよ。

GPSは使えないの?「Google Map」を毎日使ってるけど、自分の位置情報が簡単にわかるよ。

GPSも活用するんだけど、GPSは天候状況や周りの建築物に影響されて、数mの誤差が出ることがあるんだ。自動運転車において数mの誤差は命取りになる。だから現在位置を割り出す上で自動運転車は、
① GPSで大まかな位置を知る
② 自動運転車がLIDARで近くの物体を認識する
③ ①、②と「3Dマップ」を掛け合わせ、現在位置を割り出す
という複雑な処理をすることで、現在位置を正確に割り出しているよ。
また、もっと高精度なGPSを使ったり、これから打ち上げられる準天頂衛星(みちびき)を活用したり、GPS側の精度を上げていく研究も活発になされているよ。

②と③は一瞬のうちにすごい量の処理をしているんだね、すごい…

だからこそ膨大な計算を一瞬で行うマシンが必要なんだ。
ちなみに今回の日立BRTの実証では、地面に磁気マーカーを埋め込んでいて、そのマーカーとバスの距離からバスの現在位置を割り出しているよ。この方法だと磁気マーカーの費用はかかってしまうけど、膨大な処理が不要にもなるし、電波に頼らないから信頼性が上がるね。

どうやって「判断」するの?

自動運転車が人の代わりに、どうやって周りを判断しているの?

言葉自体は聞いたことあると思うけど、「人工知能(AI)」を活用しているんだよ。自動運転車の開発の肝だね。
かなり昔から「人工知能(AI)」という言葉は使われているけど、人工知能は大きく分けて2つのタイプに分かれるんだ。

2つのタイプ?

①演繹的(えんえきてき)AI、②帰納的(きのうてき)AI。①は「左から人が走ってきたら、右に避ける」など、条件に対して一つ一つルールを決めていくようなものだよ。

一方で②は色んなデータを「学習」して、どんどん人口知能が賢くなっていくんだ。
今世間で研究されているAIのほとんどは②で、自動運転車に活用されているAIももちろん②の帰納的なAIだよ。

人工知能って機械だよね。機械が賢くなるの?あんまりイメージが湧かないけど…

そうだね。過去の走行データや、人の運転操作を読み取って、「こういう場面では、こういう操作が必要」という知恵を機械一つずつ溜めていくイメージだよ。

データを学習するってことは、データの量が重要なの?

君は本当に鋭いね。 自動車を運転していると、本当に色んなシーンが想定できるよね。99%事故を起こさないAIを作るのは簡単だけど、最後の1%、極力100%に近づけるのがとても難しいんだ。
その1%を詰めていくにはとにかくデータ量が重要だから、AIを開発している会社は実際に走行データを溜めて、自社のAIを賢くさせているんだよ。今はGoogle系のWaymo社が合計1,287万km(18年7月時点)の走行データを溜めているね。

なるほど。できるだけ100%安全なものを目指してほしいね。

データ量も重要なんだけど、人工知能自体の学習手法も非常に重要で、今研究が盛んな分野なんだよ。
本当はここで人口知能の手法について説明したいけど、本当に長くなりそうだから今日はここまでにしておくよ。

どうやって自動で「動かす」の?

そういえば、ハンドルを握るロボットは乗っていないけど、誰が運転しているの?

ハンドルだけじゃなくて、アクセルやブレーキも最近の車は電子制御されているんだよ。簡単に言うと、ハンドルを操作するとその情報を電気信号に変換して、車に伝えているんだ。だから、電子回路に直接信号を送れば、ハンドルを動かさなくても自動車を制御できるんだよ。
自動運転車の中には、そもそもハンドルが付いていない車もあるのが象徴的だよね。

でもハンドルが無くて動き出すと、ちょっとびっくりだね。

そうだね、最初はびっくりするかもしれないね。
でもハンドルが無い分、車内の座席とかの配置はかなり自由にできるんだよ。だから未来の自動運転車をイメージした車内は、大きな机があったり、リラックスできるソファーがあったり、かなり自由な設計になってるよね。そうした点はメリットになると思うよ。

車輌関連以外で必要な技術ってあるの?

あと、今回の日立市の実験では商業高校下に大きなポールが立っているけどあれは何?

あれは道路の横からの飛び出しを監視するためのセンサーだよ。
一つクイズだけど、40km/hで走っているバスって、急ブレーキをかけるとどうなると思う?

どうだろう。家の車だと40km/hくらいで走っている時に、お母さんが急ブレーキを踏んだことがあるけれど、ちょっと前のめったくらいだったかな。

そうだね、自家用車ではそうだけどバスでは立っている人もいるので、転倒して大けがをすることもあるんだよ。
あと、バスのような大きな車だとブレーキを踏んでから、止まるまでの距離を「制動距離」っていうんだけど、それがすごく長くなるんだよ。 電車とか急ブレーキを掛けてもすぐに止まらないのと同じだね。

そうなんだ。でも制動距離が長くなると、何か問題でもあるの?

止まる距離が長くなると、バスは急には止まれないので事故につながりやすくなるよね。だから、急な飛び出しとかを極力早く知ることが重要。
自動運転車両になっても、交差点の壁の向こうとか、見えないところはたくさんあるよね。そうしたところの情報を知るために、道路や路側とかのインフラと呼ばれるものと連携することが大事なんだ。
今回の実証実験だと、信号が変わる時間の情報も自動運転車はあらかじめ知っていて、急ブレーキをなるべく踏まないように注意をしているんだよ。

見えないところでもいろいろなことをやって、安全を確保しているんだね。これなら安心して自動運転バスに乗れそうだよ。

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